生成AI(人工知能)を使って質問に回答するサービスに記事を無断で利用されて著作権を侵害されたなどとして、朝日新聞社と日本経済新聞社は26日、米新興企業パープレキシティに対し、記事の複製の差し止めや削除、1社につき22億円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
急速に発達・普及する生成AIによる記事の無断利用を巡っては、欧米の報道機関が相次いでAI企業を提訴。国内では今月、読売新聞が大手報道機関として初めて訴訟を提起した。国内の大手報道機関3社が訴訟で足並みをそろえるのは異例だ。
パープレキシティは、従来の検索エンジンと生成AIを組み合わせ、質問に対して幅広い情報源から関連する情報を抽出して要約して回答するサービスを提供しているとうたう。
朝日、日経両社が発表した訴状の要旨によると、パープレキシティは回答を作成する際に、両社のサーバーなどに収録された記事を複製してパープレキシティが管理するサーバーに保存。遅くとも2024年6月ごろから、これらの情報を元に、記事が含まれた文章を、回答結果として利用者のスマホやパソコンに表示する行為をくり返したという。
両社は記事の無断利用を防ぐため、自社サイトに「robots.txt」という特定のファイルを設置して利用拒否の意思表示をしているが、パープレキシティは無視して利用を続けているといい、複製権や公衆送信権などの著作権を侵害していると訴えている。
また、両社の社名や記事を引用元として示しながら、実際の記事内容と異なる虚偽の事実を表示している回答があるとも指摘。情報の正確さが求められる新聞社の信用を損なうもので、不正競争防止法違反とも主張している。
両社は、プレスリリースでパープレキシティの一連の行為について「記者が膨大な時間と労力を費やして取材・執筆した記事について、対価を支払わずに大量・継続的に『ただ乗り』するもの」と指摘。「事態を放置すれば報道機関の基盤が破壊され、民主主義の根幹を揺るがしかねない」と訴えている。